「Inter BEE 2019 出展報告!」
11月13日~15日の三日間、第55回国際放送機器展、通称、Inter BEE 2019に今年もメラノックステクノロジーズジャパン株式会社との共同出展を行いました。出展ブースは、昨年と同じホール7のブース番号 7202、お隣のホール6と繋がる2つの入り口のちょうど間の位置にありました。
出展テーマ
「放送のIP化」において、昨年から今年にかけて、SMPTE ST2110、NMOS IS-xxといった、放送局におけるIPの標準化作業はほぼ完了しつつあり、それに伴い、これらの仕様に準拠した機器が登場しつつあります。
個々の機器が、IPの標準化に準拠していると謳っていても、それらを実際の現場に投入するまでには、音声、映像に向けたこれらの機器を組み合わせて、従来の放送のワークフローに当てはめようとした時に発生するであろう課題や、繋げたときに想定外のことが起こらないのか、仕様に対する解釈の違いがないのかなどを、事前に確認・検証することが必要となり、業界として、現在この部分にフォーカスが集まっています。
そのため今回は、「Mellanoxが実現する Video over IPネットワーク - 繋がる・使える・視える-」をテーマに掲げてデモを行いました。
「繋がる」
– IP Remote Production Network
IPインフラの根幹を提供するIPスイッチには、PTP グランドマスター、SDNオーケストレーション ソフトウェア、カメラ、SDI/IPコンバータ、4Kカメラ映像、ストリーミングサーバといった、ブース内に展示した様々な機器の接続に加えて、今回は、ホール1~7をまたぎ、14社による13のブースを10 ~ 100Gb/sの速度のSMPTE ST2110ベースで接続した特別共同展示:「IP Remote Production Network」の構築を行いました。
各社の機器を一か所に集めて接続検証を実施することはこれまでもありましたが、実際に光ケーブルでホールを跨いで接続し、SMPTE ST2110ベースで4K の映像伝送を行った展示はこれまでになかったのではないかと思われます。本ネットワークを介し当ブースでは、池上通信機様から配信された4K画像を表示しておりました。(以下のMellanox SN2010スイッチに繋がる、1対の黄色い光ケーブル3本が実際に池上通信機様(100Gb/s)、NEC様(10Gb/s)、Photron様(100Gb/s) からの光ケーブルになります。)
時間に追われる中、他社製スイッチ、PTP グランドマスター、カメラ、インカム等々様々な機器との接続を含め、世界初であろうことを数多く行う事になり、また当初思い描いていたことが必ずしもすべて想定通りには動かなかった各社のエンジニアの苦労や負担には、深夜・早朝までの検証を含め、大変なものがあったかと思いますが、結果として、より多くの知見を得ることが出来、また以下のチャートのように弊社が想定していた以上に様々な機器が「繋がる」ことになりました。
– NVIDIA Jetson Xavier + ConenctX-5 EN + Rivermax による、
SMPTE ST2110ベースの4K 伝送デモ
従来のSDIからIPへの移行に伴い、SDIベースの機器ではハードウェアを主体とした構成であったのに対し、昨今のCPUの進化と様々なオフロード機能により、IP化に伴い、サーバ上で動作するアプリケーションとして動作する、機能のソフトウェア化が進んでいます。
これは、全体をソフトウェア化することで将来の仕様の変更などに対し柔軟な対応を可能し製品のライフタイムを延長すると共に、時間にクリティカルな部分のみにハードウェアを活用することで、システムの安定性を担保しCPUにかかる負荷を削減する形となります。このようにIP化は、機器のソフトウェア化につながっています。JT-NM(Joint Task Force on Networked Media)が、提示するIP化のロードマップの最終段にもクラウド化が掲載されています。
今回のデモでは、NVIDIA Jetson Xavier+Mellanox ConnectX-5 ENネットワークカード+放送業界向けのRiervamaxライブラリの構成を2台使用し、4K映像の送出側と受け側として見せています。Jetson Xavierは、本来、AI開発環境のプラットフォームとして活用されるGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)を搭載したARM プロセッサベースの手の平サイズのコンピュータであり、その内部にLinuxディストリビューションであるUbuntuを搭載、Ubuntuのファイルシステム内にある4K映像を ConnectX-5 ENカードと通じて、SMPTE ST2110ベースのプロトコルで配信しています。
ConnectX-5 ENカードには、様々なCPUオフロード機能が搭載されており、放送業界向けに開発が続けられている、Rivermax ライブラリと共に活用することで、映像伝送に向けて更に最適化が図られます。
Rivermax が提供するカーネル・バイパス機能により、従来のネットワークカードが活用するネットワークのプロトコルスタックを利用せず、ソケット機能により、IP伝送自体をConnectX-5 ENのカードのハードウェアで実行させることで、プロセッサの能力にかかわらず、4K映像の伝送を可能にしています。加えて、ConnectX-5 ENは、元々、映像の画角・深度により確定する帯域幅を一定に保ちながら伝送を行うパケットペーシング機能をハードウェアとして搭載しており、Rivermax ライブラリにより、このパケットペーシングをSMPTE ST2110 ベースに成型させ、またアプリケーション側とフレーム・バッファ単位での映像データの受け渡しを行う事で、アプリケーション側に対する割り込みの頻度を軽減し伝送の効率性を更に高めています。更にJetson Xavier 側において、GPGPU が得意とする行列計算として 受信側の映像描画のYUV<=>RGB の変換を行っています。
ConnectX-5 ENをはじめとする、Mellanox のネットワークカードは、現在大手のクラウド事業者を中心に、25GbE以上のネットワークカードにおいて、64%の市場占有率を持っており、また、Jetson Xavierが搭載するGPGPUもクラウド事業者にとっては、VDIサービスを提供するために既に活用されている機材の1つとなります。今回は、そのひな型をデモとしてお見せ致しましたが、仮想化環境での動作が確認されていけば、将来的には、IP化によりサービス自体をクラウド環境上で提供していくことも可能となるのではないでしょうか?
– 次世代Spectrum2スイッチ SN3700C
また、今回のデモでは、最大400Gb/s EthernetまでをサポートするSpectrum2シリコンを搭載した、次世代の100Gb/s Ethernetスイッチ SN3700C の動態デモを国内で初めて行いました。(電源が入っていないと「それは、モックアップですか?」と聞かれるための、動態展示です、はい。)
「使える」
– Nevion社 VideoIPathによるスイッチの管理
昨年のInter BEEでは、SN2000シリーズスイッチ上のDockerコンテナに、Reidel社の提供するNMOS Explorerを搭載し、スイッチ単体でNMOS IS-04/05に基づくデバイスの発見・管理が可能であることをお見せ致しました。
ですが、実際の運用においては、他社の提供するSDNオーケストレーションソフトウェアやブロードキャスト・コントローラにおいて接続されている機器が包括的に管理されることで従来のSDNベースのワークフローに沿った形で、放送機器として活用されることになるかと思われます。
そのため、今回のデモでは、Nevion 社のSDNオーケストレーションソフトウェアである、VideoIPath を活用してその連携をお見せ致しました。このように他社製ソフトウェアと連携が取れることを示すことは、実際の運用での「使える」を考える上で極めて重要であると考えています。特にMellanox SN2000シリーズの場合、VideoIPath において機器個別のドライバを選択することなく、NMOS 準拠となる、Open Flowベースでの動作が可能となっています。
Mellanoxにおいて、Nevion 社とのVideoIPath に関するコラボレーションは、2017年10月に発表された物であり特に新しいものではありませんが、EBUにより、NMOS準拠の加速が勧告される中、改めてその重要性に変化が生じているものとして、改めてデモとしてご提示させていただきました。
なお、今年になってソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社は、放送業務用分野を中心としたIP(Internet Protocol)ベースでの映像制作・配信ソリューションにおいて、Nevion 社との戦略的協業体制を構築することを発表し、また同社の筆頭株主になる旨の発表をされています。
「視える」
– Mellanox NEO+WJH
今回、ブースでは池上通信機様より4Kの映像配信を受けておりました。放送のIP伝送においては、この画面が止まった時、これは、止まった画面が表示されているのか、あるいは、機材に何らかの不具合が出ているのかを瞬時に把握する必要がございます。しかしながら、これまでのソリューションでは、ネットワークスイッチに対し、SNMP(Simple Network Management Protocol) により、外部から問いかける形で問い合わせる必要があり、この頻度は、約1秒程度の頻度が限界であり、1秒未満の障害については、その発生自体を取りこぼす可能性がありました。Mellanox SN2000スイッチが、新たに実装したテレメトリ機能、「WJH(What Just Happened)」は、これまでとは逆に、スイッチ側から状況を報告するする形になっており、テキストベースだけではなく、Mellanox の包括的な管理ツールである「NEO」とともに活用することで、複数台のスイッチの状況を可視化することを可能にするものとなっています。例えば、スイッチでパケットドロップが発生すれば、パケットを落としたスイッチ側は何が理由でパケットを落としたのかを把握しているわけであり、「WJH」の文字通りにその内容を伝えるものになります。この新機能は、スイッチOSの更新により提供されるものであり、驚かれた来場者の方もおられたのですが、NEOも含めて、現時点無償で提供されています。
■ NEOによる可視化の例(IP Remote Production Networkによる各ブースのスイッチ):
■ NEO上からのWJHの表示例(障害の内容と発生頻度を時系列で表示)
ざっくりとデモを振り返ってみましたが、いかがでしたでしょうか?
会場では、13ブースを接続した、特別共同展示:「IP Remote Production Network」には多大な関心をいただいていたように思います。
また「Mellanox スイッチを見かけることが増えてきたね」と、言っていただけていること大変うれしく思っています。
会期中、ブースにお越し頂いた方、ご来場、誠にありがとうございました。また、関係者の方々、お疲れさまでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ConnectX-5 EN:http://krmt.net/test/product/adaptor/ethernet-adaptor/127/
SN2000シリーズ:http://krmt.net/test/product/switch/ethernet-switch/116/
SN3000シリーズ:http://krmt.net/test/product/switch/ethernet-switch/2716/
Rivermax:http://krmt.net/test/product/software/1978/
NEO:http://krmt.net/test/product/software/management-software/264/
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